「臨地実務実習Ⅱ」(3年次)
4年間で600時間以上の実務経験を積む、本学独自の超長期インターンシップ「臨地実務実習」。今回は、国内外で高い評価を受けた「ゴジラ-1.0」ほか、数々のヒット作を手掛ける映像制作会社、株式会社白組様にてシステム部の実習に参加した学生の様子をレポート。映像業界におけるITエンジニアの可能性について、人事の乱場様、システム部長の入田様、そして在学時に白組様での実習を経て同社へ就職し活躍する金内さんを交えて対談を行いました。
参加者
株式会社白組:
乱場由美子 氏(管理部)、入田尭光 氏(システム部 部長)、金内謙典氏(システム部 ※本学、デジタルエンタテインメント学科 卒業生)
東京国際工科専門職大学:
斎藤直宏 デジタルエンタテインメント学科 教授
学生から教わることも。AIとインフラ領域で活躍した実習生
まずは、今回実習に参加した学生(AI戦略コース3年生2名)の様子を教えてください。
入田:二人とも非常に優秀な学生さんでした。今回はAIメインの課題に取り組んでもらい、後半はインフラ周りも経験してもらいましたが、最新のAI知見については、目の前でコーディングしてもらうなど、こちらが教わることも多かったですね。あと1〜2週間ほど長く時間が取れたらよかったと思うほどです。
乱場:今回の実習では、卒業生の金内さんにメンターとして学生の指導をお願いしました。年齢も近く、彼自身が経験してきたことを身近な立場で後輩に伝えてもらえたので、結果的にとても良い形になったと感じています。
実習の受け入れには「採用に繋げたい」という視点ももちろんありますが、それ以上に「映像業界のシステム(裏側)の仕事を知ってほしい」という想いが強くありました。実際に現場を経験することで、映像業界と他業界の違いやおもしろさに気づき、興味を広げてもらうには、直接来て経験してもらうのが一番効果的だと考えています。
クリエイターだけじゃない。映像業界で求められる「ITエンジニア」
乱場:CGや映像の業界というと、どうしても「クリエイター」のイメージが強いですよね。しかし、裏でその制作環境を支えている人たちがいることを紹介する機会は少なく、イメージを持っている学生さんも少ないと思います。実は、エンジニアの仕事はIT業界でも映像業界でも共通して通じるものなのです。
入田:おっしゃる通りです。映像業界ならではの独特な応用の仕方はありますが、基礎的なIT技術はどの業種でも共通です。大学で学ぶITのスキルや知識は、当然白組のような映像制作の現場でも大いに活用できます。
乱場: 特別な勉強をしないと入れないわけではなく、普段大学で学んできた知識が意外なところで役立ちます。「映像業界のエンジニア」が学生の皆さんの就職の選択肢にあがってくれると嬉しいですね。
入田: ITをしっかり学んでいれば、どの業界、どの職種でも活躍できます。特にコンテンツ業界は慢性的にエンジニアが不足しており、システム専任者がいないと業務が回りません。映像業界にはITスキルを使う場所が必ずあるので、活躍できる場がたくさんあります。
斉藤: 映像業界特有のデータの扱いや企業間のやりとりといったノウハウはありますが、ベースのIT知識がしっかりしていれば問題ありません。制作のプロセスさえ覚えてしまえば、そこからシステムを改善していくことは十分に可能です。

「裏側」を知ることで、コンテンツの楽しみ方が変わる
今回の実習に参加した学生たちはITやAIをメインに学んでいますが、実際に採用となった場合、CGや映像に関する専門知識はどの程度求められるのでしょうか?
乱場: その点については、金内さんの実体験が参考になるかもしれませんね。金内さんは入社前、どのくらい映像技術に興味があったんですか?
金内: 映像作品は昔から大好きで、アニメーションは500作品近く、映画もたくさん見ていました。ただ、あくまで「見る側」だったので、裏でどんな技術が使われているかは知りませんでしたね。
乱場: 作品の裏側に入り、インフラエンジニアとしてさらにそのシステムの裏側を知ると、「クリエイターがこう表現するために、裏でシステムがこういう処理をしているんだな」と想像できるようになります。思わずニヤッとしてしまうシーンもあると思いますよ。
金内: 確かに、学生時代に白組での実習を経験してからは、エンドクレジットをしっかり見るようになりました。「あっ、この作品、白組が関わっていたんだ!」と気づくことも増え、映画の見方が大きく変わりました。
乱場: 裏側を知ると見方が変わり、興味のあるコンテンツの世界がさらに広がっていきます。一人の視聴者として見ていた頃とは違う、より深いところで作品を楽しめるようになるのは、映像業界で働く大きな魅力の一つです。

これからの映像業界で需要が高まる人材
今後、映像業界でさらに需要が高まる職種や領域はどういったものでしょうか?
乱場:「制作進行」や「TA(テクニカルアーティスト)」ですね。絵作りがわかっていて、技術的な面から制作をサポートできる人材の必要性はますます高まっていくと思います。
斉藤:大学の実習でも、クリエイターの視点だけだとチームが回らなくなることがあります。そこで自然と進行管理を引き受けたり、効率化のためのツールを作ったりするうちに、「自分はこちらの方が向いているかも」と気づき、TAや制作進行へと進路を変える学生もいますね。
乱場:これまで学生がTAに興味を持っているのを直接体感する機会が少なかったので、今後はTAや制作進行に興味がある学生さんにインターンに来てもらうのも大歓迎です。実際に現場を知り、関係性を作っていくことが第一歩になると思います。
斉藤:TAの役割は、ツールの開発から動きの表現方法まで非常に幅広いです。一つの専門性に特化するよりも、新しいことに興味を持ち、引き出しを多く持っている人材が求められます。大学の授業で学んだ点と点が、現場での経験を通じて「こういうことだったのか!」と繋がる瞬間を、ぜひ白組での実習で経験してほしいですね。 入田:今後のAI活用も業界の大きな課題です。今回のAI分野を専攻している学生たちの実習を通して、データを再利用できる形で整理しておくことの重要性など、運用上の気づきを得ることができました。ITエンジニアの活躍の場は、映像業界にはいくらでもあります。ぜひ多くの学生にチャレンジしてほしいですね。
卒業生インタビュー
株式会社白組 システム部 金内 謙典さん(2025年3月卒業)

本学を卒業し、白組様でインフラエンジニアとして活躍する金内さんに、現在のお仕事や大学時代の学びについて伺いました。
Q1. 現在の職種と、志望した動機を教えてください。
大学でCG制作を学ぶうち、技術を利用する側から、「どのような技術で制作を効率化できるか」といった制作を円滑に進めるための仕組みを俯瞰的に設計することに強い魅力を感じるようになりました。それが自身の関心と合致し、映像制作会社のインフラエンジニアを志望しました。
Q2. 現在の業務内容と、やりがいを教えてください。
社内のサーバー構築やネットワーク・セキュリティの運用保守、設備の管理などを担当しています。ネットワークのボトルネックを解消し、スタッフが円滑に業務を行えるようサポートすることで、コンテンツが完成していく過程を見られることが大きなやりがいです。また、膨大なデータ処理が求められる映像制作において、トレードオフになりがちな「セキュリティ」と「利便性」を技術的な工夫で両立させることに面白さを感じています。
Q3. 本学に入学した経緯は?
入学前は自衛隊員として勤務していましたが、映画やアニメの制作陣への憧れから「将来は映像制作企業に就職したい」という目標を抱きました。企業と連携した実務的なカリキュラムと、CG技術・理論を学べる環境が、未経験から即戦力として業界に入るための最短ルートだと確信し、入学を決意しました。
Q4. 在学中の想い出や、今の仕事に役立っていることは?
後輩に引き継いだ「レンダーファームの構築」が印象深い思い出であり、技術者としての基礎を築く重要なプロジェクトでした。
また、学生時代に学んだCGの基礎知識(色空間やカラープロファイルなど)が、現在の業務でモニターの色に関するトラブルが発生した際、ハードとソフトの原因切り分けに直結しており、非常に役立っています。
Q5. 今後の目標と、高校生や在学生へのメッセージをお願いします。
今後は、制作効率とセキュリティを高いレベルで両立させる基盤構築と、コストパフォーマンスが最大化される最適なシステム構成の導入に挑戦したいです。
皆さんには、ぜひ「とりあえずやってみよう」という行動力を大切にしてほしいです。一見無関係に見える知識も必ずどこかで結びつくので、失敗を恐れず幅広い興味を持ってください。きっとなんとかなります!
株式会社白組
映像制作・CG・VFXを中心に、映画、アニメーション、テレビ番組、CM、展示映像など幅広い分野のコンテンツ制作を手がけるクリエイティブスタジオ。
実写とCGを組み合わせたVFX制作やフルCGアニメーション、デジタルコンテンツ開発など、多様化する映像表現に対応し、国内外のさまざまなプロジェクトに参加しています。また、映像制作のみならず、新しい技術や表現手法の研究・開発にも積極的に取り組み、先端技術を活かした映像づくりを推進しています。